新宿・新大久保おかあさん

　30代後半あたりから付き合っている「無呼吸症候群」という悪友がいる。

　そいつは昼過ぎか夕方に突然やってきて私を底知れぬ睡魔に陥れるのだ。先日も、夕方の面接時間に間に合うよう新橋から新宿に向けて電車に乗っていたのだが、ハッと気が付いたら大宮だ。

　アルミ缶を拾っている時、氷結のカンを他のライバルと取り合いになり、500ｍｌ缶だけに意地になっても手を離さずにいたら指が全部ちょん切れてしまい、そこでガバっと目が覚めた、などという夢を見た時は「やっぱり仕事の不安が夢に出ているのかな」と自己分析していたが、何のことは無い目が覚めたのは呼吸を止めてしまう無呼吸症候群の仕業だったのだ。

　まず最初は頭が痺れ始める。字を書いていてもミミズの這ったようなものしか書けなくなる。周りの音が遠くなる。そしていつしか瞼が閉じてしまう。こうなったらもうおしまいだ。小一時間は復活出来ない。

　治療法は無いらしい。寝る時に気管が閉じない様なマウスピースをハメて寝る、とか横向きになって寝るとか医者には言われたが、マウスピースハメて寝ていてたら余計に病人になってしまいそうだし、寝相の悪さに関しては物忘れのひどさに次いで自信のある私なので、いつも横向きで寝ていられるハズが無い。

　結局は「ストレスも原因の一つですよ」と言われた医者の言葉を信用することにして、寝る前には出来るだけノホホンとした気持ちで眠りにつくように意識している。そんなこんなで約10年経つがやっぱり時々やってくる。腐れ縁と思ってこれからも付き合っていくしかないんだろう。

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