新宿・新大久保おかあさん

広島市に18から30まで住んでいたので私にとっては第二の故郷だと思っている。市内にはナメクジの如く市電が走り、どこに行っても山と川と広い空が見えるこの街が今でも大好きだ。

下宿のオバちゃんは下見に行った学生にもちゃんとお茶をたてて出してくるような品あるオバちゃんだった。広島人はほぼそうなのだがオバちゃんも根っからのカープファンで、夜の食堂（賄い付き下宿だった）はカープ戦の成り行きによって料理の味も変わった。今は駅前の再開発で無くなってしまった愛友市場で買ってきたコイワシのお刺身は広島ならではの味だった。

広島に住んでいるとカープと並んで原爆のことも自然と身体に刷り込まれる。ほとんどの家の玄関先には「被爆国首相よ八月六日九日を人類総ザンゲの日として休日に制定せよ」という白いプレートが貼られている。電器店勤務の頃は電球交換などで得意先に行くと、砂糖がたっぷり入ったオバアちゃんコーヒーを飲まされながら原爆の話を良く聞かされたものだ。

今日は70回目の原爆の日。毎年朝8時15分にはNHKの映像と共に黙とうするのが習慣になっていたのだが、今朝は不覚にも寝過ごしてしまい反省の気持ちで1日を過ごした。今の日本に生きてこの国の素晴らしさを日々享受している者としては、過去の戦争で犠牲になったたくさんの方々、想像を絶する辛苦を乗り越え今の日本を作って来たすべての先輩方に対してたった1分でも独り眼をつむって思いを馳せる時間があっても良いと思う。

今年は日本にとってとても重要な年になった。ここではあまり思想的なことを書くつもりもないのだが…15日はちゃんと参拝しようと思っている。



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